ヴェルディ 歌劇「ドン・カルロ」〜英国ロイヤル・オペラ

オペラを見に行きました。とーっても暑い日。季節外れの暑さに、オペラハウス内のカフェというかバーにも、お水が自由に飲めるように置かれて、とっても涼し気で、うれしかった!

f:id:pinacola:20170524082313j:image

今回の演目は、ヴェルディの「ドン・カルロ」。改めて、やはりヴェルディのオペラの中でも名作中の名作だと思います。ストーリーは無敵艦隊を率いたフェリペ2世の、世界を覇権した日が沈むことのないスペインの王室にまつわるもの。フェリペ2世の息子ドン・カルロは、許嫁だったエリザベッタが父のフェリペ王と結婚することが決まり、失意の底にあるが思いが断ち切れない。それを軸に、様々な人間模様、感情が次々と表現されていきます。王と言えども当時は宗教の力に逆らえなかった状況、権力者の孤独、カルロへのピュアな思いを抱きながらも毅然と運命にしたがい女王の役割を果たし続けるエリザベッタ、天然にストレートに感情の赴くままのカルロ。その他にも、宗教裁判長や、カルロの友人ロドリーゴ、美貌のプリンセス・エボリ等、キャラクターの際立った人たち多いのが、このオペラの魅力。

今回の歌手で良かったのは、カルロのテノールBryan Hymel。代役を務めたエリザベッタのソプラノKristin Lewis。エボリのメゾソプラノEkaterina Semenchuk。とにかく2人の女性は見事でした。声の深み、安定感、説得力。このオペラでは本当に素晴らしいアリアがそれぞれの役に与えられていますが、涙が出そうなくらい良かったです。バリトンロドリーゴは若手期待のSimone Piazaola、悪くはなく完璧でしたが、私としてはもう少し深めのピッチ高めの声が好みでした。バスのフィリッポのIldar Abdrazakovはやや線が細めの王で、良かったですが、私の好みはどっしりしたバスの深い深い声でしたので、やや軽めの印象でした。

なんといっても、この作品、4幕でフィリッポが愛されていないことを嘆く「誰も私を愛したことがない・・・一人寂しく眠ろう」のアリアの場面から、宗教裁判長とのやり合い、エボリ公が裏切りを告白し自分の美貌を悔やむアリア「呪わしき美貌」(一度そんなこと言ってみたい・・・)まで、息をつかせないほど、音楽も歌も一気呵成に流れていきます。素晴らしいんです。


Don Carlo - 'Nell'ispano suol' (Ferruccio Furlanetto, Eric Halfvarson, The Royal Opera)

あとは、カルロとロドリーゴの有名な二重唱。これはなかなか友情に泣けてしまいます。二人は死ぬまで一緒だと。


Don Carlo trailer (The Royal Opera)

更に最後のエリザベッタのアリア「世のむなしさを知る神よ」。まだまだ若い彼女が、祖国フランスから異国スペインへ嫁ぎ、恋や愛といった躍るような思いを封印して、いったいどんな心境なのでしょう…

5幕バージョンでしたが、私は1幕目はなくてもいい派です。5幕だと4時間コースで長い。ちょっと長すぎます!あと、どう考えても作者の意図では、笑うところでないシリアスな箇所で、英国の観客は結構笑っていました。あれは、シアターというと、隙あらば笑っちゃおう、という習性みたいなものなんでしょうか。

合唱もパワーがあって良かったです。いいこと尽くしの公演でした。来てよかった!

休憩時間、今回はブラウニーをおやつに。定番の天井桟敷の席でした。

f:id:pinacola:20170524082816j:image

f:id:pinacola:20170524082829j:image

アムステルダム 〜 Amstel Amsterdamホテル

出張で一泊二日のオランダ、アムステルダム

夕食は、歴史のあるとてもエレガントなホテル、Amstel Hotelのレストランで。運河の横にあり、席から船が見えて、デッキでも食事ができて気持ちが良さそう。建物も内装も植民地時代の贅を尽くした素晴らしい装飾で、うっとり。素敵なシャンデリアに見とれてしまうホールウェイもあって、ロマンチックでしたね〜。いつかゆっくり泊まってみたいです。

f:id:pinacola:20170520055352j:image

f:id:pinacola:20170520055415j:image

f:id:pinacola:20170520055430j:image

ヨーロッパは今は白アスパラの時期。そしてオランダの名物と初めて聞いた、フライドポテト。風味のあるマヨネーズをつけて食べます。普通のと比べて、太めのポテトがほっくり揚がっておいしい!その他のお料理も見た目も味も、素晴らしかったです。

f:id:pinacola:20170520055714j:image

f:id:pinacola:20170520055725j:image

f:id:pinacola:20170520055738j:image

この街には日本のホテルオークラがあり、そちらに宿泊。特に日本的というのではないですが、サービスなど行き届いて、とてもほっとします。朝食のビュッフェには、ちょっとした日本食のチョイスがあって、ごはん、梅干し、お漬物や温泉卵、鮭にほうじ茶と、いろいろ、お味もとても良かったです。海外のホテルでこんなちゃんとした和のものが食べられるなんて、嬉しいですね〜。

f:id:pinacola:20170520060109j:image

f:id:pinacola:20170520060124j:image

ホテルの窓からの風景。昔からの建物が残っています。

f:id:pinacola:20170520060142j:image

 

 

ロンドンの青空:ミュージカル 「オリバー!」(Oliver Twist)

昨日の日曜日は、本当に素晴らしい快晴。広がる大空に、鮮やかな青、くっきりと白い雲。5月の季節柄、緑が生えてとっても清々しくてさわやかで、気温も陽ざしも温かく、幸せ感いっぱいでした。

f:id:pinacola:20170516062514j:plain

f:id:pinacola:20170516071023j:plain

ゴルフの練習への道すがら、こうやって抜けるような青い空をぼやーっと眺めていたら、遥か古い記憶から、どこからともなく歌の歌詞がふわーっと。ミュージカル「オリバー!」のとある曲でした。

ずっと以前子供だった時、先生がクラスの英語劇の題材として選んだのがこのミュージカル。曲も歌もリリカルだったり元気が良かったり、躍動的だったり素晴らしくて、踊りも楽しかったなあ。舞台はロンドンの下町で、孤児院で育ったとっても純粋な少年オリバーが悪い仲間たちと貧しいけれども心の通った温かい生活をしたり、その後お金持ちの子であることがわかって引き取られたり、みたいなお話しだったはず。

いろいろ思うことはあるのですが、まずは、長年解けなかった謎が解けた。Who will buy?という曲で、オリバーが「今日の素晴らしい朝の青空を、箱に入れてずっと宝物にしておきたい、誰かが買ってくれないかな」と青空をあんなに素敵なものとして歌っている理由は、ロンドンのお天気では、快晴や青空がめったにないからなのですね!それに、長い暗い秋と冬の後の、この春の訪れの喜びは、今だからこそわかります!

それから、子供心にわくわくして何度も聞いた音楽は、アメリカ英語を中学で勉強し始める前に最初に接した英語。かなり訛りもあったけど、こてこての英国英語だったのをしみじみと思い出すと、意外に私って、英国とご縁があったのね、、、と思ったわけでした。

それに、この時に同じ舞台に上がった友達の1人は、今は実力派の脇役として広く知られている女優さんです。彼女の役は、悪いスリ集団の親しまれる姉御の役。あの時からやっぱり光っていたね!

ぼーっと青空を見ていて、突然遭遇したタイムトリップでした。こういうことがあると、生きているって楽しいなあ、って思いま~す。

とっても懐かしい。。。今でも歌詞を覚えているものね。。。子供の時の記憶ってすごい。これが英語との最初の出会いだったのかもな,,,

Who will buy this wonderful morning? Such a sky you never did see.

Who will tie it up with the ribbon and put it in the box for me.

So I could see it at my leisure whenever things go wrong

and I would keep it as a treasure to last my whole life long

... So what am I to do, to keep the sky so blue

there must be someone who will buy!

f:id:pinacola:20170516071038j:plain

f:id:pinacola:20170516071055j:plain

和食でほっこり

先週は日本で交流させていただいていた会のメンバーの方と、ロンドンで数年ぶりに再会しました。やっぱり和食がいい、とマリルボーンのCocoroで積もる話を。

その方は、4月から半年間の語学研修でロンドンにて、なかなかハードなきつい毎日の真っただ中。語学学校は厳しく容赦ないですね。英語での会話から、ビジネスの立ち居振る舞いまで、何を言ってもやっても先生は冷徹に指摘をする。そればかり続くと、大人であればそんな状況はしばらくご無沙汰なので、まあかなり参ってくると思います。それを思うと、駐在員でこちらの会社に組み込まれていると、多少は言葉や態度がそぐわなくても多めに見てもらえるので、その面では楽をしているのだな、と思いました。

でもそういう風に、厳しくきちんと教えていただけると、成果も大きいですよね。駐在員だと、努力しないとほとんど変わらない、なんてことはありそうです。

最後は締めのラーメンと、デザートはわらび餅風のお菓子でした。お料理は品数が豊富で、日本さながらの雰囲気で寛いで楽しいひと時でした。

f:id:pinacola:20170514204909j:plain

和食ついでに、今日は朝お弁当を作って、一仕事した後ゆっくり食べました。外は素晴らしいお天気です!

f:id:pinacola:20170514204902j:plain

f:id:pinacola:20170514204854j:plain

まるで冬のロンドン & レコード市

この数週間、ずっと冬みたいな天気。晴れ間は時々、たいがいはどんより曇ったり小雨、10度前後なんて日もあり、マフラーに冬のコートです。寒いんです、これが。赴任してきた昨年春は、冬服を持たず、コートは薄手の春物だけだったから、もう本当に毎日寒くて寒くて辛かったなあ… 朝の駅の通勤でも、みんな冬仕様です。

f:id:pinacola:20170506064802j:image

会社近くのSpitalfieldsマーケットは、金曜日のレコード市。朝も早々から、真剣に物色されている方々…

f:id:pinacola:20170506065121j:image

f:id:pinacola:20170506065140j:image

f:id:pinacola:20170506065158j:image

f:id:pinacola:20170506065208j:image

今週のイタリアン in ロンドン

今週はたまたま2軒、イタリアンのお店へ。

1軒目は普段あまり行かないClerkenwellにあるPaesan。この近隣は歩いていてもとても雰囲気がある街並み。古い趣の建物をカジュアルなレストランにした感じです。店員さんは親切で、お料理も美味しかったです。さりげなく、お肉も良いお味で大満足でした。

f:id:pinacola:20170506063305j:image

f:id:pinacola:20170506063334j:image

f:id:pinacola:20170506063356j:image

今日はシティの職場近くのこじんまりしたカジュアルなイタリアン、L'antipast City。オーセンティックでしたし、イタリア人の方々が故郷の味を求めて集まるお店、って感じでした。ブルスケッタはコショウがピリッと効いて美味。野菜のグリル、トマトソースのパスタ、海老とピスタチオ風味のクリームパスタ、そしてパルマハムのピザもモチッとした生地で、美味しかったです。

f:id:pinacola:20170506063421j:image

f:id:pinacola:20170506063438j:image

f:id:pinacola:20170506063451j:image

f:id:pinacola:20170506063547j:image

f:id:pinacola:20170506063558j:image

ロンドンのレストラン、すごいですね〜。本格派ですね。また行きましょ!

英国ロイヤル・バレエ「うたかたの恋(Mayerling)」

ロイヤル・バレエの「マイヤリング(Mayerling)」観てきました。相当の人気演目のようで、チケット取る段階で既にかなりオーケストラ席は僅少。どうしてなんだろうと思いましたが、観てみてなるほどでした。

日本語ではこの作品は「うたかたの恋」とも言われます。お話は、オーストリアハプスブルクの皇太子ルドルフが様々な葛藤のあげく常軌を逸してしまい、身分違いの若いマリーと心中したという実際にあった事件。マイヤリングは心中した館のある場所の地名です。


Mayerling trailer (The Royal Ballet)

バレエとしては、過去見た中では「ロミオとジュリエット」に近い印象、つまりものすごい疾走感があります。音楽が登場人物の状況や心情を表現するので、一律的な美しさではなく、暗かったり怖かったり、甘美だったり官能的だったりドラマチック(作曲はリスト)。白鳥の湖とか、眠れる森の美女とかのような、おとぎ話や妖精の夢の美しい世界ではなく、生身の人間のどうしようもない性(サガ)を、古典の美しいバレエにダイナミックな振り付けを加えて、ものすごい迫力で表現する。主役は男性ですが、ずっと出ずっぱりで、たいへんにタフ。でもそのハードさが感動を生み出すように思います。

このように、一瞬も目が離せない舞台なのですが、私としては手放しで好きとは思えませんでした。理由は、ルドルフにはあまりにも恋愛感情がなくて、女性と次ぎ次ぎ深い仲になっていくのですが、本能的なだけでロマンチックな感情が微塵もないのです。また女性を含め登場人物が揃ってそういう感じ。バレエの表現としてはすごいなあ、と思うのですが、感情移入するには、やっぱり恋とか愛とか、叶わぬ想いとか、そういうものを介在させて欲しい、ああそういうやるせない感情があるんだから、激しい行為も仕方がないよねえ、と思わせて欲しいと思うのでした。

その点、ロミオとジュリエットは程よくいいですね。若い2人の極限状態での恋愛感情、止められない情動が、バレエで「わー、ここまで」というくらいに、表現されているのに参ってしまいます。音楽もいいですしね〜。

話戻ってこのマイヤリングで良いなあ、と思うのは、モダンバレエまでいかないけれど、古典のようにおとなしくなく定型的でもないので、男性の複数によるアンサンブルなど、躍動感あるところ。日本人プリンシパルの平野さんも、すごく力強くて素敵でした。

素晴らしい舞台でした!