英国ロイヤル・オペラ「アドリアーナ・ルクヴルール」

雪がちらつく寒い夜、コヴェント・ガーデンのロイヤル・オペラハウスでオペラ「アドリアーナ・ルクヴルール」を見てきました。

主役のソプラノは、人気・実力・ヴィジュアル揃った世界最高の歌手のひとりアンジェラ・ゲオルギュー。スターの登場を心待ちにしているオペラファンは多かったのではないでしょうか。

イタリアのチレア作曲のこのオペラは、コンサートなどでソロで歌われる有名で美しいソプラノのアリア(独唱)があり、音楽も軽やかで心に沁みるきれいな旋律があり、ソプラノ、テノールバリトンメゾソプラノがそれぞれ聞かせどころがあって、声の競演にうっとりわくわくするオペラです。

お話は、人気と実力を備えた女優アドリアーナ・ルクヴルール(フランスの実在人物)(ソプラノ)と貴族のマウリッツイオ(テノール)は恋仲ですが、このマウリッツイオは貴族の有力者ブイヨン伯爵夫人 (メゾソプラノ)に政治的な後ろ盾を頼り、夫人はマウリッツイオを愛している(いわゆる三角関係)。恋敵の二人の女性がそれはそれは激しい火花を散らした挙句に、女優のアドリアーナがマウリッツイオの愛を得るものの、恋に敗れた伯爵夫人が仕込んだすみれの花の毒によりアドリアーナは命を失う、という話です。

歌われる言葉を全曲追っていくと考えさせられたり、感じたり。。。大女優は今でこそセレブリティ。でも18世紀当時は女優と貴族は身分違いの恋。芸術に真摯に身をささげるつつましやかな庶民のアドリアーナと、貴族たちが対比され、彼女の純粋さ、強さと素朴さが胸を打ちます。これがヴェリズモ的なものということかしら。。。

ゲオルギューは、華やかで、とても綺麗。歌もしっかりと丁寧に歌われて心にしみじみとして、貫禄があります。本当にスターだなあと思います。


Angela Gheorghiu - Adriana Lecouvreur: Io son l'umile ancella - New York 2005

(それにしても、難しいアリアですね、、、Brava!)

もう1人、若いアドリアーナに父のように愛情深く寄り添う劇場のマネージャーのミショネ(バリトン)。アドリアーナへ秘めた恋心を持っている。今回はGerald Finleyが演じ、とても良かったです。年の違いもある恋、実らない思いに戸惑いながら、その思いを歌い上げるバリトンの深い声が素晴らしかった。

テノールのBrian Jagde、メゾのKesenia Dudnikovaは二人は比較的若手と思いますが、すごくよかったです。聞かせました。

4人が皆良かったので、全体として素晴らしい声の競演となりました。ほっこり、幸せな気持ちになれる公演でした。

おまけに、ゲオルギューはスターなのに、カーテンコールの様子を見ると、気さくな感じがしました。

もうひとつおまけに、以前「アドリアーナ・ルクヴルール」を見たのは、2007年頃のNYメトロポリタン・オペラですが、マウリッツィオをプラシド・ドミンゴが演じました。実は、彼のはるか昔のメトロポリタン・オペラデビューがこの作品のこの役だったとかで、何十年目かの記念で再度この役を歌い、観客も期待いっぱいでした。一言でいって、すごくモテる若い素敵な男性の役どころですが、ダンディなこのバリトンは、年月を経ても声も風貌も演技も変わらず素晴らしく聴衆を魅了したのでした。

 

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