英国ロイヤル・バレエ「うたかたの恋(Mayerling)」

ロイヤル・バレエの「マイヤリング(Mayerling)」観てきました。相当の人気演目のようで、チケット取る段階で既にかなりオーケストラ席は僅少。どうしてなんだろうと思いましたが、観てみてなるほどでした。

日本語ではこの作品は「うたかたの恋」とも言われます。お話は、オーストリアハプスブルクの皇太子ルドルフが様々な葛藤のあげく常軌を逸してしまい、身分違いの若いマリーと心中したという実際にあった事件。マイヤリングは心中した館のある場所の地名です。


Mayerling trailer (The Royal Ballet)

バレエとしては、過去見た中では「ロミオとジュリエット」に近い印象、つまりものすごい疾走感があります。音楽が登場人物の状況や心情を表現するので、一律的な美しさではなく、暗かったり怖かったり、甘美だったり官能的だったりドラマチック(作曲はリスト)。白鳥の湖とか、眠れる森の美女とかのような、おとぎ話や妖精の夢の美しい世界ではなく、生身の人間のどうしようもない性(サガ)を、古典の美しいバレエにダイナミックな振り付けを加えて、ものすごい迫力で表現する。主役は男性ですが、ずっと出ずっぱりで、たいへんにタフ。でもそのハードさが感動を生み出すように思います。

このように、一瞬も目が離せない舞台なのですが、私としては手放しで好きとは思えませんでした。理由は、ルドルフにはあまりにも恋愛感情がなくて、女性と次ぎ次ぎ深い仲になっていくのですが、本能的なだけでロマンチックな感情が微塵もないのです。また女性を含め登場人物が揃ってそういう感じ。バレエの表現としてはすごいなあ、と思うのですが、感情移入するには、やっぱり恋とか愛とか、叶わぬ想いとか、そういうものを介在させて欲しい、ああそういうやるせない感情があるんだから、激しい行為も仕方がないよねえ、と思わせて欲しいと思うのでした。

その点、ロミオとジュリエットは程よくいいですね。若い2人の極限状態での恋愛感情、止められない情動が、バレエで「わー、ここまで」というくらいに、表現されているのに参ってしまいます。音楽もいいですしね〜。

話戻ってこのマイヤリングで良いなあ、と思うのは、モダンバレエまでいかないけれど、古典のようにおとなしくなく定型的でもないので、男性の複数によるアンサンブルなど、躍動感あるところ。日本人プリンシパルの平野さんも、すごく力強くて素敵でした。

素晴らしい舞台でした!