ヴェルディ 歌劇「ドン・カルロ」〜英国ロイヤル・オペラ

オペラを見に行きました。とーっても暑い日。季節外れの暑さに、オペラハウス内のカフェというかバーにも、お水が自由に飲めるように置かれて、とっても涼し気で、うれしかった!

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今回の演目は、ヴェルディの「ドン・カルロ」。改めて、やはりヴェルディのオペラの中でも名作中の名作だと思います。ストーリーは無敵艦隊を率いたフェリペ2世の、世界を覇権した日が沈むことのないスペインの王室にまつわるもの。フェリペ2世の息子ドン・カルロは、許嫁だったエリザベッタが父のフェリペ王と結婚することが決まり、失意の底にあるが思いが断ち切れない。それを軸に、様々な人間模様、感情が次々と表現されていきます。王と言えども当時は宗教の力に逆らえなかった状況、権力者の孤独、カルロへのピュアな思いを抱きながらも毅然と運命にしたがい女王の役割を果たし続けるエリザベッタ、天然にストレートに感情の赴くままのカルロ。その他にも、宗教裁判長や、カルロの友人ロドリーゴ、美貌のプリンセス・エボリ等、キャラクターの際立った人たち多いのが、このオペラの魅力。

今回の歌手で良かったのは、カルロのテノールBryan Hymel。代役を務めたエリザベッタのソプラノKristin Lewis。エボリのメゾソプラノEkaterina Semenchuk。とにかく2人の女性は見事でした。声の深み、安定感、説得力。このオペラでは本当に素晴らしいアリアがそれぞれの役に与えられていますが、涙が出そうなくらい良かったです。バリトンロドリーゴは若手期待のSimone Piazaola、悪くはなく完璧でしたが、私としてはもう少し深めのピッチ高めの声が好みでした。バスのフィリッポのIldar Abdrazakovはやや線が細めの王で、良かったですが、私の好みはどっしりしたバスの深い深い声でしたので、やや軽めの印象でした。

なんといっても、この作品、4幕でフィリッポが愛されていないことを嘆く「誰も私を愛したことがない・・・一人寂しく眠ろう」のアリアの場面から、宗教裁判長とのやり合い、エボリ公が裏切りを告白し自分の美貌を悔やむアリア「呪わしき美貌」(一度そんなこと言ってみたい・・・)まで、息をつかせないほど、音楽も歌も一気呵成に流れていきます。素晴らしいんです。


Don Carlo - 'Nell'ispano suol' (Ferruccio Furlanetto, Eric Halfvarson, The Royal Opera)

あとは、カルロとロドリーゴの有名な二重唱。これはなかなか友情に泣けてしまいます。二人は死ぬまで一緒だと。


Don Carlo trailer (The Royal Opera)

更に最後のエリザベッタのアリア「世のむなしさを知る神よ」。まだまだ若い彼女が、祖国フランスから異国スペインへ嫁ぎ、恋や愛といった躍るような思いを封印して、いったいどんな心境なのでしょう…

5幕バージョンでしたが、私は1幕目はなくてもいい派です。5幕だと4時間コースで長い。ちょっと長すぎます!あと、どう考えても作者の意図では、笑うところでないシリアスな箇所で、英国の観客は結構笑っていました。あれは、シアターというと、隙あらば笑っちゃおう、という習性みたいなものなんでしょうか。

合唱もパワーがあって良かったです。いいこと尽くしの公演でした。来てよかった!

休憩時間、今回はブラウニーをおやつに。定番の天井桟敷の席でした。

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