ヴェルディ歌劇「ナブッコ」〜ミラノ・スカラ座
数々の伝説と名演、偉大な歌手達の歴史を刻むミラノ・スカラ座に、いよいよ来ました!いつかはと思っていましたが、やっぱり感激です。
スカラ座の外観はそのイメージに比べると派手さはなく控えめな佇まい。でも中に入って見ると、ヨーロッパならではのセンスとなんとも言えない優雅でゆったりとした雰囲気、華美ではなく洗練された装飾、そこに集う方々のお洒落で素敵なこと!ため息がでます。
演目はヴェルディのナブッコ。3つ目に作曲したオペラで、スカラ座での初演が成功してヴェルディはブレイクしたのだそうです。作品としては、題材も旧約聖書の時代の古い昔のバビロニアの話、主役もテノール、ソプラノでなくて渋いバリトン、色恋話はほとんどなく、友情も家族の愛情も苦悩も感じさせない淡々とした物語展開で、特別有名なアリアもなく、地味といえば地味ではあります。スカラ座のこのプロダクションは、現代の服装で皆洋服だし、色もグレーと黒で、非常にダークででした。
主役のナブッコは、バリトンのレオ・ヌッチ。75歳です!しかし声量も、声の強さも深みも、フレージングも表現も出演者の中で一番でした。準主役のアビガイッレを歌ったソプラノAnna Piozziも良かったです。指揮はネルロ・サンティ。86歳!一番拍手が大きかったです。どうやらトスカニーニに続くイタリアオペラ指揮の巨匠で、メトではオペラの神様と尊敬されているとのエピソードも。
感想としては、ロンドンのロイヤルオペラを見慣れていると演劇性、演出重視なわけですが、スカラ座ではオペラは歌手、声、歌が主役でメインなんだ〜!ということ。例えば、メトでもロイヤルオペラでも、今時歌手達もビジュアルや演技がすごく求められ高い水準なのですが、スカラ座ではそこまで追求されてなさそうです。結果として、レオ・ヌッチは、得意のリゴレットで見せるおどけた道化師のあの滑稽なアクションを、ほぼそのままこのナブッコでも随所に見せ、大真面目なはずがちょっと笑っちゃいそうなくらいです。ただ、歌は本当に素晴らしく、それだけでもう十分!と観客に感じさせることがスカラ座の真髄なのでしょう。
オペラの前に、広場のレストランで軽く食事。イタリアはやっぱり美味しいですね〜。
最後に、スカラ座のショップで往年の実力派であり超イケメンのスターテノール、フランコ・コレッリのオマージュ写真集を買いました。カッコよすぎます。マリア・カラス、バスティアニーニ、サザーランド、ニルソンとの共演、なんて豪華だったんでしょう。テバルディとのアンドレア・シェニエ、見てみたかったなあ…夢のまた夢。