パリ オペラ座の夜 〜 モーツァルト歌劇「皇帝ティートの慈悲」

パリにはオペラ座が2つあり、新しくてモダンなバスティーユには過去何度か行きましたが、今日は初めて憧れのガルニエ宮でのオペラ。ネオ・バロック洋式のガルニエは、豪奢で風格がありこの世のものとは思えない壮麗なオペラハウス。芸術品だと思います。天井にはシャガールの絵があり、舞台も客席もどこも全てが美し過ぎます。

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演目はモーツァルトの「皇帝ティートの慈悲」。今日のオペラは本当に感動しました。モーツァルト最晩年の作品で(魔笛と同じ年)、華々しさはなく古典的なオペラセリアであまり上演されませんが、音楽は美しさが際立ち、たくさんのアリアやデュエットが心を揺さぶるような旋律です。心が洗われ、忘れていた心の柔らかい部分や感情が蘇るような感覚にひたりました。

今日の公演の凄さは、主たる役柄の全ての歌手が、本当にとっても素晴らしくて最高だったこと!!こんなこと、めったにない幸運です。

ティートはテノールRamon Vargasで、慈悲深く心優しい皇帝がぴったりで、歌もさすがでした。皇帝の苦悩や孤独、許しについて結構考えさせられました。「親愛からの忠誠ではなく、恐れによる忠誠ならば、そのようなものは要らない」

ヴィッテーリアはソプラノのAmanda Majeski。とっても存在感があり、冒頭の悪女ぶりから反省モードで苦悩を歌うところまで素晴らしい表現力。声もきれいで、高音から低音までしっかり。将来スターになりそうと期待いっぱい。

セストのメゾソプラノのステファニエ・ドストラックは、作曲家プーランクの親戚とのこと。悪い女性にたぶらかされてしまう若い男性のナイーブさを演じきっていました。3幕の皇帝に語りかけるアリアは繰り返しのフレーズをピアノで静かに歌うところ、モーツァルトらしい美しさに聞き入りました。

カップル役のセルビーリア(ソプラノ)Valentina Nafornitaとアッニーオ(メゾソプラノ)のAntoinette Dennefeldは、二人とも声も美しく歌もしっかり、しみじみとしながら強く訴えかけて、すごく良かったです。若い二人の瑞々しさを感じました。1幕のデュエットは、美しくて涙が出てしまいそう。。。3幕のセルビーリアのアリアも、ビッテーリアに泣いてるだけじゃだめよ、と優しく諭す内容でとてもきれい。

最高の夜でした。ガルニエのオペラハウスは、どこにいても目にするもの全てが美的で完璧で、居るだけで酔ってしまうような扇情的な空間。モーツァルトの琴線に触れる音楽、慈悲と優しさをテーマにしたオペラを、最高の歌で聞けた幸せな時間に感謝です。

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