シューベルト歌曲「冬の旅」イアン・ボストリッジ リサイタル

初めてMayfairにあるWigmore Hallでリサイタルを聴きました。こじんまりとしていますが、趣があって素敵なコンサートホール。数日前に思い立ち、偶々一枚だけ出ていたチケットでした。英国人テノールイアン・ボストリッジの「冬の旅」。シューベルトのこの作品は生でぜひ聞いてみたかったので、とても楽しみだったし、オペラとは違う歌の別の世界、ドイツリート(歌曲)は未知の体験で期待でワクワク。

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冬の旅は、絶望した青年が旅に出て、最後まで救いのないまま終わる重ーい内容です。詩に曲をつけているので、言葉に大事な意味があるのですね。かなりの聴衆が、手にプログラムの歌詞を見ながら、言葉を理解しながら聞いていました。シューベルトは譜面上に、音の強弱や音色、テンポの指示や、アクセントなど、ほとんど一音一音、一語一語ごとに指定して書き込んでいるようです。演奏者はこれを再現するわけですが、なるほどこれは大変なことで、呼吸を保ちながら、ここまで仔細な表現をするのは技術的にも、解釈や深め方という意味でも、労多い事としみじみ思いました。

シューベルトの音楽は、「菩提樹」や「春の夢」など、暗さ厳しさの狭間の恵みのように暖かく包み込むような静謐なメロディが心をホロリとさせます。

ボストリッジは素晴らしく、全24編を暗い中にも迫力と豊かな表現で、大喝采。ピアニストは、どう見てもラガーマンという風貌の強そうな男性でしたが、詩の世界、シューベルトの抑えながらも繊細な音楽を丁寧に力強く演奏していました。ドイツリートはピアノは伴奏ではなく、共演者なんだなあ、と感じました。

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音楽の、また新しい分野に目が開いたような気がします。これからも楽しみます!

地下のカフェに、きっとかつて舞台に立った偉大な演奏家たちでしょう、写真がたくさん飾ってありました。ソプラノのルチア・ポップにチェロの天才ジャクリーヌ・デュプレなど…

偶々お隣のギリシャ人おじさまとの会話では、指揮者の小澤征爾さんや、村上春樹ノルウェーの森で音楽が効果的に使われている話だとか、ギリシャに来たらビザンチン建築ののダフニ修道院がお薦めとか、楽しい雑談でした。

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