クリスマスの行事

ロンドンに限らず欧州の冬は、日が短く曇りの暗い日々が続く。おそらくクリスマスを巡る伝統と行事は、そんな季節に人々の心を温かく明るく過ごすための知恵でもあるのでしょう。

12月に入ると、ロンドンのシティのオフィス街でも、どこもロビーにクリスマスツリーや、建物や道路にライトアップされたデコレーションで綺麗に飾られます。どれも同じものはなく、とても素敵。

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自宅近くでは、先週から今週は、生の木のクリスマスツリーが売られているのが目につきます。結構直前に買って、飾りつけするんだなあ、と思ったり。

聞くとクリスマスは家族、親戚と過ごすと話す人が多く、クリスマスディナーはチキンやターキーのローストが定番なんだそうです。

会社でも、クリスパスパーティとクリスマスランチは、この季節の大事な、皆が楽しみにしている行事。パーティは会社全体で、ブラックタイやドレスで少し着飾って昔ながらの雰囲気のあるギルドの建物で開催でした。クリスマスランチは、各部門ごとに好みのレストランを予約して。とってもお店が混んでいる様子からすると、本当にこのクリスマスランチも行事としてポピュラーで大事なんだなあ、定着しているんだな、と思います。どちらも、皆で集まってたわいもない話をしながら飲んで楽しく過ごす、ゆるりとした雰囲気の会。

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12月はそんなことで、結構ごちそうを食べる月なのだなあと実感しています。和食でなく、洋食のbig mealは、美味しいのですが、おなかも胃も少し疲れ気味かも。食事も長時間なので、結構パワーも要ります!

でも最初に戻り、やっぱりこの冬の一番辛い時期を、毎年楽しみにできるいろいろな行事やご馳走、その準備で忙しくしたり、旧交を温めたり家族で過ごしたりして、乗り越えるのは文化と伝統なのですね。これを過ぎると、少しずつ日も長くなっていきますね。

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印象派絵画〜ロンドン・ナショナルギャラリー

今日は冷え込みましたが、気持ちの良い晴天。土曜日の朝、ナショナルギャラリーに来ました。

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マネ。官僚の息子で生粋のパリジャンの洒落者だったそうです。当時流行りのキャバレーの店の女性を描いた作品。革命から100年足らずのパリの「今」を描こうとした画家。

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モネ。同じモチーフを連作する発想はそれまで西洋絵画になくモネが最初、日本の浮世絵に傾倒、影響を受けたため。新しいモノ好きで、絵の具や、筆触分割法、色の効果を科学的に取り入れたり、機関車や、それでしか行けない当時の海辺のリゾートを描いたり、等、トライしながら、同時に古来の遠近法にこだわるなど、しっかり守っているのだそうです。

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ドガ。銀行家の息子で同じく洒落者パリジャン。働く女性、労働者を描いた。ダンサーの軽やかな絵の印象が強いですが、すごく絵が上手いんだそうです。上から見下ろすような構図は西洋絵画では以前なかった手法とのこと。

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スーラ。子供の目と心でよーく見ていると色々なことがわかってくる絵。上流階級が住む中洲の対岸の岸にいる労働者階級の少年たち。

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先生のお話を聞くにつれ、印象派の画家達は、フランス革命からナポレオンの時代を経て、一足先に産業革命が始まったイギリスに追いつこうとするフランスの変化、変わりゆく様子をそれぞれの方法、視点で映しだそうとしているように思いました。革命からまだ100年足らずで様々なことが急速に変わっていった歴史なのだなあと、強く感じました。

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英国ロイヤル・オペラ「ランメルモールのルチア」

ドニゼッティーのオペラ「ルチア」を見てきました。全幕にわたって歌のメロディーもオケの音楽も、大体の歌詞の意味も憶えちゃってるくらい大好きなオペラ。昨年2016年に新演出で見て、椅子から落ちそうなくらいびっくりして半ば呆れたKatie Mitchellの演出が今年もまた!


Lucia di Lammermoor – trailer (The Royal Opera)

主役ルチアを歌ったリゼッテ・オロペサは、これまでライブで見た全てのソプラノの中で、最高のルチアでした。声に透明感あり、コロラチューラの技術も完璧、全て最高音は危なげなく、音量の微妙な強弱も聞き入るほどで、演技も見事。狂乱の場の難しいアリアも本当に素晴らしかった。拍手もブラボーもすごかったです。彼女は2008年頃NYのメトロポリタンオペラの「つばめ」でコケティッシュな召使い役、ワーグナーの指輪「ジークフリート」の森の小鳥を聞いていますが、印象に残っています。当時はもっと軽い声だったのが、深さを増して声量もしっかりして主役級にずいぶん変わってきたと感慨深いです。ずっと聞いていたい歌でした!


Why Lucia di Lammermoor is one of opera's most challenging roles (The Royal Opera)

エドガルド役のテノールIsmael Jordiは細身の優男風で声も素晴らしくナイーブな感じが良かったです。彼も今後注目したい歌手の一人だと思いました。高音が連続してものすごくしんどいと言われる最後の難曲アリア2曲も立派でした。欲をいえば、最後のアリアの高音部は、もう少し芯というか息の太さが、軽く明るい響きと共にあると良かったなあ。

エンリーコのバリトンChristopher Maltmanは、迫力ありとにかく声量がすごい。シャウト系で圧巻でした。演技も良かったです。声の印象としては、トスカのスカルピア等の悪役が合いそう。

このプロダクションはオペラ演出家としては過激なことで知られるKatie Mitchellのもので、賛否が分かれるでしょう。オーソドックスで普通のルチアを見に来た人達には、びっくりなはず。原作では一途な恋を絶たれたルチアは理性を失い、精神的にショック過ぎて気が狂って死んでしまうのですが、この演出では設定は変わり、柔に傷ついて茫然自失になる前に、意志を持つ女性として状況を変えようと行動します。でも最後は発狂するのですがその理由は原作には全くない流産。今年の舞台では変更になり、なくなっていましたが、昨年バージョンでは1幕の私の大好きな主役二人のデュエットで、なんと妊娠の伏線のシーンが本当にリアルに演じられ、びっくり仰天でした。そのようなシーンを演じながら、全く影響されずに立派に歌い切る歌手の二人のテクニックにはものすごく感心しました。

舞台は最初から最後まで2つに区切られ、 あたかも2カ所中継のように、2つの場面が展開します。通常なら、言葉で語られるだけで見えないものが、このデュアル進行の効果でビジュアル化されてくるので、本当なら歌に集中して聞き入るはずのところで、舞台の展開に気がとられちゃったりします。昨年はこれがなんとなく邪道にも思えたのですが、今回は結構面白く楽しめました。慣れたのかな?

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もしかすると今までのオペラ経験でナンバーワンの公演だった気がします。改めてこの作品は、難しいベルカント技巧と美しく情緒豊かな旋律と音楽が溶け合った歌を聴かせるオペラだと思いました。今回はルチア中心に、声と歌に重きが置かれた布陣にだったと思われ、だからこそ、斬新で革新的な演出のアクの強い演劇性にも負けず、ちょうど良いバランスで最高のパフォーマンスになっていた気がします!

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ひまわり 〜 ロンドン ナショナル・ギャラリー

ナショナル・ギャラリーでの絵画鑑賞。一度、神話をテーマにしたルネッサンス期の絵を見に来たことがありましたが、今回はもっと時代は下った後期印象派などの絵を中心に、見てきました。

ゴッホの「ひまわり」。東京にある絵より、レモンイエローで黄色が薄く明るいけれど、それ以外はほぼ全て構図など同じ。たぶん大きさも。

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ゴッホの糸杉の絵。椅子の絵。椅子の方は、共同生活を試みたゴーギャンと喧嘩別れして去った後、椅子とパイプしか残っていない、寂しさを表現した絵とのこと。

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ターナーの絵。勇姿を誇った船が、時代遅れとなり、小さな船に引かれて解体に向かう光景。ターナーはこういう世間の話題を集める、関心を引くようなテーマで多く絵を描いたのだそうです。もう一枚は、当時の新技術、蒸気機関車の絵。

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ルネッサンスルーベンス、神話画のサムソンとダリラ。サムソンの筋骨隆々とした様子や、ダリラの表情や体、後ろのお婆さんの悪人風まで、微細に書かれた秀作。

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ダヴィンチの岩窟の聖母。同じ絵が2枚あるのですが、最初のはガブリエルの手や、マリアの手が不自然だったり、キリストがどれなのか紛らわしい絵だったので発注者から断られ、書き直したとのこと。こちらの作品は、書き直し後のもの。ダヴィンチは顔などの表情、こんなにも繊細に描くのだなあ、と初めて知りいいなと思いました。

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フェルメール

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こんなに素晴らしい作品を、広々とした空間でゆっくり見られるのは本当に豊かなことですね。 また来よう。

コリンシアホテルロビーのクリスマスの飾りつけ。こちらも素敵でした!

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パリ オペラ座の夜 〜 モーツァルト歌劇「皇帝ティートの慈悲」

パリにはオペラ座が2つあり、新しくてモダンなバスティーユには過去何度か行きましたが、今日は初めて憧れのガルニエ宮でのオペラ。ネオ・バロック洋式のガルニエは、豪奢で風格がありこの世のものとは思えない壮麗なオペラハウス。芸術品だと思います。天井にはシャガールの絵があり、舞台も客席もどこも全てが美し過ぎます。

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演目はモーツァルトの「皇帝ティートの慈悲」。今日のオペラは本当に感動しました。モーツァルト最晩年の作品で(魔笛と同じ年)、華々しさはなく古典的なオペラセリアであまり上演されませんが、音楽は美しさが際立ち、たくさんのアリアやデュエットが心を揺さぶるような旋律です。心が洗われ、忘れていた心の柔らかい部分や感情が蘇るような感覚にひたりました。

今日の公演の凄さは、主たる役柄の全ての歌手が、本当にとっても素晴らしくて最高だったこと!!こんなこと、めったにない幸運です。

ティートはテノールRamon Vargasで、慈悲深く心優しい皇帝がぴったりで、歌もさすがでした。皇帝の苦悩や孤独、許しについて結構考えさせられました。「親愛からの忠誠ではなく、恐れによる忠誠ならば、そのようなものは要らない」

ヴィッテーリアはソプラノのAmanda Majeski。とっても存在感があり、冒頭の悪女ぶりから反省モードで苦悩を歌うところまで素晴らしい表現力。声もきれいで、高音から低音までしっかり。将来スターになりそうと期待いっぱい。

セストのメゾソプラノのステファニエ・ドストラックは、作曲家プーランクの親戚とのこと。悪い女性にたぶらかされてしまう若い男性のナイーブさを演じきっていました。3幕の皇帝に語りかけるアリアは繰り返しのフレーズをピアノで静かに歌うところ、モーツァルトらしい美しさに聞き入りました。

カップル役のセルビーリア(ソプラノ)Valentina Nafornitaとアッニーオ(メゾソプラノ)のAntoinette Dennefeldは、二人とも声も美しく歌もしっかり、しみじみとしながら強く訴えかけて、すごく良かったです。若い二人の瑞々しさを感じました。1幕のデュエットは、美しくて涙が出てしまいそう。。。3幕のセルビーリアのアリアも、ビッテーリアに泣いてるだけじゃだめよ、と優しく諭す内容でとてもきれい。

最高の夜でした。ガルニエのオペラハウスは、どこにいても目にするもの全てが美的で完璧で、居るだけで酔ってしまうような扇情的な空間。モーツァルトの琴線に触れる音楽、慈悲と優しさをテーマにしたオペラを、最高の歌で聞けた幸せな時間に感謝です。

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パリの土曜日

パリの土曜日、朝起きてちょこちょこ出かけながら、ホテルの周辺だけで1日過ごしました。仕事も少しあったので、食事やお茶に出かけては、息抜きしたり考えごとしたり。

訪れたお店は、どこも素敵でした!

パン屋さんのPaul。店内雰囲気ありました。オペラ座近く。

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ランチはフレンチビストロChez Monsieur。フレンドリーで居心地よくお客さんいっぱいの人気店でした。

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とらやさんで和菓子のきんとんとお茶

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夜はCafe de la Paixでメインとデザートのセットメニュー。小ぶりのステーキが量も丁度良く美味しかった。

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デパートのギャルリー・ラファイエットのグルメ館のようなところで、マカロンをお土産に。ピエール・エルメジャン・ポール・エヴァン、アラン・デュカスのチョコレート等のスイーツに、キャビアやサーモンのペトロシアン(NYにもあった懐かしい店)、ハムにインドスパイスのお店等、すごく賑わっています。さすがパリ…!

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ヴェルディ歌劇「ナブッコ」〜ミラノ・スカラ座

数々の伝説と名演、偉大な歌手達の歴史を刻むミラノ・スカラ座に、いよいよ来ました!いつかはと思っていましたが、やっぱり感激です。

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スカラ座の外観はそのイメージに比べると派手さはなく控えめな佇まい。でも中に入って見ると、ヨーロッパならではのセンスとなんとも言えない優雅でゆったりとした雰囲気、華美ではなく洗練された装飾、そこに集う方々のお洒落で素敵なこと!ため息がでます。

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演目はヴェルディナブッコ。3つ目に作曲したオペラで、スカラ座での初演が成功してヴェルディはブレイクしたのだそうです。作品としては、題材も旧約聖書の時代の古い昔のバビロニアの話、主役もテノール、ソプラノでなくて渋いバリトン、色恋話はほとんどなく、友情も家族の愛情も苦悩も感じさせない淡々とした物語展開で、特別有名なアリアもなく、地味といえば地味ではあります。スカラ座のこのプロダクションは、現代の服装で皆洋服だし、色もグレーと黒で、非常にダークででした。

主役のナブッコは、バリトンのレオ・ヌッチ。75歳です!しかし声量も、声の強さも深みも、フレージングも表現も出演者の中で一番でした。準主役のアビガイッレを歌ったソプラノAnna Piozziも良かったです。指揮はネルロ・サンティ。86歳!一番拍手が大きかったです。どうやらトスカニーニに続くイタリアオペラ指揮の巨匠で、メトではオペラの神様と尊敬されているとのエピソードも。

感想としては、ロンドンのロイヤルオペラを見慣れていると演劇性、演出重視なわけですが、スカラ座ではオペラは歌手、声、歌が主役でメインなんだ〜!ということ。例えば、メトでもロイヤルオペラでも、今時歌手達もビジュアルや演技がすごく求められ高い水準なのですが、スカラ座ではそこまで追求されてなさそうです。結果として、レオ・ヌッチは、得意のリゴレットで見せるおどけた道化師のあの滑稽なアクションを、ほぼそのままこのナブッコでも随所に見せ、大真面目なはずがちょっと笑っちゃいそうなくらいです。ただ、歌は本当に素晴らしく、それだけでもう十分!と観客に感じさせることがスカラ座の真髄なのでしょう。

オペラの前に、広場のレストランで軽く食事。イタリアはやっぱり美味しいですね〜。

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最後に、スカラ座のショップで往年の実力派であり超イケメンのスターテノールフランココレッリのオマージュ写真集を買いました。カッコよすぎます。マリア・カラスバスティアニーニ、サザーランド、ニルソンとの共演、なんて豪華だったんでしょう。テバルディとのアンドレア・シェニエ、見てみたかったなあ…夢のまた夢。

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