ヴェルディ歌劇「トスカ」〜ロイヤル・オペラ

主役の歌姫トスカを歌うのが大スターのアンジェラ・ゲオルギュー。画家役のテノールはジョセフ・カレヤ、超悪役のスカルピアはジェラルド・フィンリーとくれば、おそらくこれ以上望むべくもなく、実力派による華々しい公演になることが約束されたようなもの。実際には…想像以上でした!

このオペラは、有名な美しいアリアの数々、叙情に溢れ心に迫るメロディー、これを演じ歌う歌手たちの個性と存在感(実質3人だけで成り立っている)、芸術を生業とする二人の恋人達と、邪悪このうえない権力者との役柄のコントラスト等、とても楽しみの多い作品です。

トスカ役のゲオルギューは、正真正銘の大スターだなあと心から思いました。美しい容姿と、優雅で豊かな演技、そしてなにより歌の素晴らしさ。1幕の登場から徐々に調子を上げて、2幕の「歌に生き、愛に生き」では完璧なアリアにうっとり溜息。情感豊かで自由自在、完璧な表現!奇跡的に凄かったなあ、本当に幸せでした。経験と鍛錬に支えられた実力に敬服です。

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ジョセフ・カレヤはイギリスで人気が高いテノールのようで、偶々翌日のBBC Andrew Marr Showで歌を披露して大喝采でした。画家カヴァラドッシ役として安定して素晴らしい歌を聴かせてくれました。

スカルピアは、ローマの警視総監で職務には厳格なはずですが、トスカを我がものにしたい衝動を全く抑えられずに、囚われの恋人の命と引き換えにトスカに身を委ねるよう迫る、本能丸出しの邪悪な人間として描かれる。バリトンのフィンリーは、役の雰囲気出してましたし、歌も良かった〜。

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舞台は、とてもオーソドックスで写実的、装置も衣装も豪奢で、これがオペラの王道、というような見応えあるものでした。物語の世界に感情移入しやすかった。

偶々お隣の初老の紳士とお話しをし、とってもオペラにお詳しく(作品、歌手、世界の歌劇場等)、楽しく意見交換しました。「今夜の主役のゲオルギューは、今の時代の本物のディーヴァだよね」「スター歌手には、次のいずれかの優れた要素がある。ビジュアル、演技力、歌。テノールのカウフマンは全部持っているんだよね」とか。なんでも昨年まで日系の企業の取締役会の会長をされていたそうで、共通のお知り合いがいたという偶然。

トスカといえば、マリア・カラスの当たり役ですが、ゲオルギューもさすがの貫禄と観客を魅了する名演で素晴らしかったです。ブラーヴァ!!とっても幸せな夜でした。

機内エンターテイメント〜My playlist

出張などでのフライト内では、機内エンターテイメントの映画や音楽などがちょっとした楽しみです。

オーディオでたくさんの音楽から懐かしい洋楽や邦楽のポップス、クラッシックやオペラのお馴染みの曲を、思いっきり個人的なフィーリングと直感で選んでマイプレイリストを作るのが結構楽しくて好きです。

何が楽しいかというと、あ、そういえば!という受け身のサプライズがある。「わー、これこれ、あの頃この歌手のこの曲よく聞いたよなあ」とか「やっぱりこの曲はいい曲だよねえ(しんみり)」とか。あとは以前は好きじゃなかったり、あまりに自分の世界と違い興味なかったりしてた曲が、聞いてみて「意外にいいんだ〜」と感動したりすることも。最近では浜崎あゆみのSeasons、Every Little ThingTime goes byとか、安室ちゃんの一連の曲、中森明菜のスローモーションとか。

とても心地よく、飛行機の暗闇のなかで、あり余る時間のなかで、時空を超えて浸っています。

前回のプレイリストでは…一番のヒットはおニャン子クラブの「セーラー服を脱がさないで」でした。歌詞がとにかく凄いのです。「おばんになっちゃうその前に、食べて」って、いったい10代女子の歌う歌詞なんだろうか…。

あとは以前クリスタルキングの大都会はまさかの選曲だったし、オフコースも渋かった。

元気・勇気をくれる応援ソング特集から、素敵な曲にほろりともしました。Zard「負けないで」岡村孝子の「あなたの夢をあきらめないで」、ゆずの「栄光の架け橋」、今井美樹Piece of my wish等々。

もしかしたら、これからの今こそ「夢」なのかもしれないなあ。

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心に残る言葉

アメリカ、欧州数カ国の出張が続きました。そんな合間に会って話しをした方々から、率直で心にしみる言葉や気づきをいただいています。

大きな目標を明確に持つこと。これが高くあって目指す方向を示し、意義あるチャレンジに値するならば、ひたすらそこを、上を見て、逸れることなく進めばいい。そこへ至るには、途中現場的に難しい問題や、感情的な抵抗や、変わることへの怖れやがあるけれども、そこに思いを入れ関わるとゴチャゴチャしてくる。 辛くもなってくるし、意見を聞いたり、調整したり、仕事も増えてくる。もしも目指す目標がはっきりとして、とても意義あるものと納得できていれば、小さな事柄は思い切って気にしなくていい。円満調和を尊べば、なかなかこういうアプローチは取りにくいけれど、大きな変化や挑戦の時には、そうでいいのかもしれない。気持ちも少し楽になります。

何かを上手くできるようになりたければ、努力、練習。楽譜を見ているだけで、ピアノが弾けるようにならないのと同じ。自分で試行錯誤して、レッスンでのアドバイスを練習してマスターして、身につけていく。道のりは長いけど、着実に手ごたえを積み重ねることが大事。

そして、私の睡眠時間は今6時間くらい、と話したら、それでは短すぎる!それじゃ疲れが取れないでしょう!と。意外に皆さんたくさん眠っているんだなあ…

あとは、最近会社を退職した同僚の言葉。淋しさはあるけれど、皆でやってきたことに誇りを感じている。大きな決断に、様々な想いがあったけれど、新しく良い人生が待っていると今は思える。皆に心から感謝したい。

ロンドン北の郊外にある素敵なレストラン。東京風のラーメン。どちらも美味しかった〜。

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ニューヨーク NY 〜冬の旅

冬のアメリカ出張、最初の都市はNY。10年前に住んでいた街。着陸した瞬間、空港から移動中の外の景色から、アメリカに来たんだなあ〜と懐かしいようなワクワクするような。

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ロンドンに住んで約2年の今、ニューヨークに来て感じたこと。

・とにかく空が、外が明るい!到着した昨日は太陽が輝き、目に痛いほどでした。青い空は広々と明るく照らされ、ほぼ0度の寒さも気持ち的にはどこへやら。ロンドンの希少な晴れの日の儚げな陽射しと比べると、違うなあ。明るい冬!そういえばロンドンは、昨日は1月の第3月曜日、「一年で一番憂鬱な日」通称Blue Mondayでした。

・外は氷点下になるほど寒いけれど、駅も空港もオフィスもホテルも、どこもかしこも室内は温度が保たれポカポカと暖かく感じる。ロンドンは駅などの公共の場も、スーパーも、ランチを買う店やレストランも、空調は低めで寒め。自分の家はセントラルヒーティングで暖めれば快適ですが、外に出る時はすごく着込む。これは古い建物を生かすロンドン一般の断熱性能の問題でしょうか…

・皆がアメリカ人であるというオーラが出ており、一律な空気感がある。白人、黒人、メキシカンの方々の坩堝ではあるけれど、共有している価値観や文化は"America"というアイデンティティなのでしょう。対してロンドンは世界の多くの地域、国から移民が多数住み、特段の共有する価値観は作らないでいるのでは?

・今朝見たテレビのCMは、懐かしいアメリカのほのぼの感を醸し出していました。NBCの朝のニュース番組Todayショーは、だいぶ構成変わってましたが、お天気のおじさんは一緒でした!あとは昨日食べたラーメンは、塩味のさっぱりで美味しかったなあ。海外で人気なのは豚骨ですものね〜。

ホテル近くのグランドセントラル駅、エンパイアステートビルに、クライスラービルも見えました。大都会だけど、ほっとするところもある街なのでした。

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女子会 at ロンドン・イタリアン

女子会したいですね!という話から始まって、職場の女性7人で昨夜、素敵なイタリアンで新年会を開催しました。

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お店はトッテナムコートロード駅から少し歩き、小さな小道を入ったところにあるFitzroviaのイタリアンレストランIn Parma。パルマの生ハムやチーズ、パスタ、デザートまで、最高に美味しかった〜!ずっと美味しいね、美味しいね、と言いっぱなし。赤ワインに少し泡が入ったlambruscoも口当たりよくお料理にぴったり。こちらのお店は小さめカフェオレのボールで飲むのが定番だそうです。

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7人は今ロンドンで同じ会社で働いているわけですが、日本人であることは共通として、その他年齢、どういうことで英国に住むことになったのか、等それぞれの環境や生い立ち(?)はいろいろです。中でも私がロンドン暮らしは一番短く、皆さん15年だとかここに住み、外国人のご主人やご家族と一緒に生き生きと過ごしていらっしゃるのは、すごいことだなあ、と心から感じるのでした。

自ら海外に住むことを決め、異なる文化と折り合いをつけたり馴染んだりしつつ、自然体で今日々を生きている日本人の女性の皆さんは、知恵も心もパワーもバイタリティーにも溢れている方々だと思います。素敵な皆さんだなあと思うのでした。

日本にいても、あたかも海外で異なる生活や文化、慣習からの刺激や驚きに触れて生活しているかのように、ワクワク、ドキドキできたら、多くの人にとってもっと人生面白く、世界が広がるのかもしれませんね〜。

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2018年 新しい年

年末年始は日本で過ごしました。凝縮された時間の中で、大切な家族や親戚、友人や会社の先輩や仲間と会ってたくさん話し、とても思い出深く、心躍るひと時でした。

今年大事にしたいこと。

「自分が既に持っているものを生かして自分らしく生きる」

「言葉を大切に」

「基本と本質から逃げない」

「時間をかけて気持ちを育てていく」

ここのところ、自分に欠けていること、足りないことが目について、時々後ろ向きになってしまいそうでした。気づいたのですが、私は私で既にいろいろな良いものを持っている。それを生かして行こう!と思います。好きなこと、幸せを感じる時間をしっかり感じて、できることを周囲に少しずつでもしていく。努力と謙虚な気持ちも。

日本での楽しかった時間の思い出を胸に、ロンドンへ戻ります。

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ロッシーニ歌劇「セミラーミデ」~ロイヤル・オペラ

ロイヤルオペラでの上演は100年以上ぶりとなる作品。ロッシーニの長編オペラセリア。細かい音符を転がすように歌うダジリタの技法が全ての役柄で多用され(というか、ずっとそういう風に歌うべく作曲されている)、歌手にとってはたいへんな安定感とテクニックが求められて、とても難易度が高いなあ、と思います。ワグナー歌手並みの実力がないと(スタミナと技術)いけないんじゃないか…この作品が歌える歌手は多くはないように思います。

しかし今回のプロダクションは、素晴らしかったです!さすがロイヤルオペラは、満を持して最高の歌手たちを揃えていました。

主役セミラーミデを歌ったのはジョイス・ディドナート。私は初めて聴きましたが、すごいなあと思いました。本当に深いふくよかなしっかりした声で、細かい音を完璧に転がしたうえに、高音は叫ぶようなパワーで突き抜けるゾクゾクする声。例えばサザーランドのセミラーミデであったら、もっと軽いタッチだろう(技巧的にはもちろんすごいけれど)と思います。対してディドナートのセミラーミデは重い声でパワフル、完璧な歌は、無条件に心を打ちました。

メゾが男性役を歌うアルサーチェは、ダニエラ・バルチェローナ。彼女はむしろディドナートより声はすこし軽いかなと思うくらいでしたが、といってもメゾなので深くてこれまた完璧な歌。本当に安定していて、男性役の軍服姿が男前!

テノールのLawrence Brownleeは、インドの王子イドレーノの役。脇役でありますが、歌は立派な難しいアリアも連発です。彼は以前やはりロッシーニチェネレントラで聞きましたが、あれから10年余り、ますます素晴らしく危なげのない完璧な歌。

残る重要な役柄として、バスのアッスールはMichele Pertusi。代役で入りましたが立派な歌でした。もともとはダルカンジェロが歌う予定だったのが、病気のため変更。以前聞いてダルカンジェロは良かったし、この役も歌ってきていたようなので、もし変更なしで出ていたら、もっともっと凄いプロダクションになっていたかもしれないなあ。

演出はDavid Alden。オリジナルは古代バビロニアが舞台ですが、現代の中東の独裁者に置き換えている。なかなかインパクトがあります。北朝鮮を思い出させるような大きな絵の風景や、ドナルドトランプを彷彿させるような赤いネクタイの人物などが登場。

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思うのですが、ロッシーニの音楽は、音楽としてだけ聴くとちょっとつまらないような気がしてしまいます。モーツアルトのように和音が豊かではなくて、もっと音楽の作りが擬音的というかシンプルだから?

また改めて問うのは、素晴らしい歌手はどういう人たちなのか?今回は全員が本当に完璧に歌いこなして、その意味ではその時点で100点といえます。が、心が震えるような、鳥肌が立つようなことが起こるのには、さらにもう少し何かが必要なようです(今回体験させてもらったような)。声の美しさ、深さといったプラスアルファ、持って生まれた才能でもあり、鍛錬の賜物でもあるのかもしれません。歌手の皆さんに心からの敬意を送ります!

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